アイホープ春アゲイン

雨音が優しい明け方だった。しとしとしと。と 
外は雨か…。
寝ていていいんだ。 
身体中をゆるやかに流れるララバイに身を委ね、
心地よい眠気に生きる喜びを感じ、いつの間にか私はまた深い眠りに落ちていた。 
静かだと感じて目をあけると雨はすっかり止み、
小鳥のさえずりすらなく家も外も静まり返っていた。
外にでよう。 
パジャマ姿にカメラをぶら下げドアを開けた瞬間、
生暖かな空気と共に春の香りが頭から爪先へゆるやかに伝う。
春なんだ、先日の君だけじゃない草も空気も春なんだ。 
休日と浮かれてはしゃぎ回れる体力もない私は、
今日1日を読書と睡眠で過ごそうと目の前に悠然と腰を下ろして広がる鷹峰山を見ながらそう誓った。 

布団に潜り込んだ私は友人から借りた本を読み、眠り、また読み、眠り、パソコンを見、納豆を食べ、写真を撮り、本を読み、電話のつながらない妻に不倫の妄想をし、また眠った。 

目が覚めたのは午後一時も回っていた頃か、妻が玄関を開ける音に気付いたからだ。 
たこ焼きを買ってきていた、私の昼ご飯らしい。 
さっと平らげた後、
先日立ち読みしたナショナルジオグラフィックの雑誌が気になりだした。
買おうか、買うまいか、
寝そべっているとまた眠りについていた。 

起きた時には徹子の部屋も始まっていた。 
あの頭には飴ちゃんが入っている。
寝呆け眼にそんなことを思い、撮り溜めた写真を眺め娘の迎えまでの時間を費やした。 

保育園に付くと娘は私に駆け寄り飛び付いてきた。 
かわいいヤツめ。 

カーステレオからタテタカコが流れていた、娘がこれ日本語?と聞いてきたので、
そうだよ、素敵でしょ、と答え
本屋へ車を走らせた。
お目当ての雑誌を購入し、ハッピーセットが食べたいという娘に対し、
アメリカ人じゃないんだ、駄菓子屋に行こうと言って
100円という大金の使い方についての社会勉強をさせてみた。 
手にとっては戻し、悩んでいた、
その横でくすんだ安室奈美恵のポスターに私は高校時代の思い出をさがしていた。 
100円ちょうどね、見た目もレトロな兄さんがありがとうと言う、私達もありがとうと言って店を出た。 
家に着いた頃はすでに五時近かった、
カメラを持ち一人外に出た。 
何となく写真を撮る、
電線を撮ってみる、
周りを見渡す、
雲を撮ってみる、
田んぼの水溜まりを撮ってみる、
周りを見渡す。

春はどこへ
春は朝から来ていた。
犬を連れた春さ…。
偶然だったのさ
次の休みはいつさ
二週間先さ
クラムボンは笑ったよ…。

朝と同じように鷹峰山は目の前にいる。

家のまわりを3周ほどまわり、すっきりした顔で
「お腹すいたー」と
私は家に吸い込まれて行ったのであった。