門出

初めて引っ越しをしたのは22歳
上京したときの事。

朝まで麻雀をやり、負けて。
数時間後実家を出た。
母親は木の陰に隠れていた。
泣いていたんだと思う

知らない街で初めて向こうで出来た友達が
部屋に来た時の事。
自分の存在が一人また一人と広まっていった喜び。

彼女が出来て半同棲的な生活がはじまり、
バイトを終えて帰ると部屋に明かりが付いて
いた時の喜び。

でもこの街じゃ無理だと
3年後逃げるように東京の部屋を出た。
カビ臭い部屋だった。

子供ができて借家住まいをはじめ、
だらだら5年もここで費やした。
すばらしい大家さんだった。
お米や野菜、色んなお裾分けをもらった。
色んな仲間が来て、音楽を聴き、お酒を飲み、
また自分の所在を覚えていってくれた。

そんなこの借家とも遂にお別れである。
お別れである。

誠に晴れやかな始まりである。